大天守5階
暗い、とにかく暗い。ここは四層目の屋根裏にあたり窓が少ない。大天守は外観は五層、内部は6階地下1階、その食い違い部分と聞けば納得する。敵は5階建と思って攻め登るが実際は異なっていて混乱を招くという仕掛けでこういった仕組みは、城ではよく用いられた。
がらんとしているが、実は大広間
畳をひけるようになっていた部屋らしく「大広間」と呼ばれていた。籠城戦の指揮所を想定していたのだろうか、広さは約70畳あるそうだ。一見するとこういう部屋のかたちかと思いがちだが、実は5階のコーナー部すべてにL字型の「入室(いりむろ)」がある。中央が大広間だとすると、入室は倉庫的な意味あいよりも、控えの間か、武者隠しが主な用途かもしれない。写真奥の階段は混雑緩和のため近世になってつけれた下り用の階段で昔は無かった。
この階段、急ですハイ
姫路城大天守の階段は、地下1階から地上6階まで上がるには約110段の階段がある。上に登るほど傾斜がきついといわれているが、適当に図面を図ってみたところ、確かに傾斜角が急になっている。
5〜6階:約51.5度
4〜5階:約51.5度
3〜4階:約45.5度(踊り場まで) + 52度(5階まで)
2〜3階:約47度
1〜2階:約49度
地階から1階:約44度
こう見てみると、3階で死守したあとは格段に登りにくくなっている。また限られた床面積を有効に活用するために急になっているとも考えられる。ここ5階にある階段は、4階とほぼ同じ傾斜だが、最上階へと続くこの最後の階段(上写真)は、階段の中央頭上に大きな梁が出ていて、より登りにくいかたちとなっている。ちなみに傾斜角45度というと、当時の建築物では比較的ゆるやかな角度。一段あたりの段差も踏面もおよそ21cm。現存天守のなかでは、丸岡城が最大で、傾斜角約65度、一段あたりの段差がなんと27cm、踏面も最小で12.5cmしかない。あとその狭さで印象深いのは松本城あたりだろうか。
- 丸岡城の階段
2階〜3階階段・傾斜角約65度
- 松本城の階段
4階〜5階階段・傾斜角約61度
切り込み番付
千鳥破風内の棟木に、切り込み番付が見られる(建築時にどの材がどこに使われるのかを記した文字や絵柄)。千鳥破風の内部に足を踏み入れ見上げると「六中め南通ちどりむね」と彫られている。これらは南北両方の千鳥破風で見られる。3階の壁際足下にも、葉の絵が描かれた切り込み番付などが見られる。同じ模様同士を継ぎ合わすといった具合に目印として使われたそうだが諸説あるらしい。
切り込み番付「六中め南通ちどりむね」
切り込み番付「六中め北通ちどりむね」
千鳥破風の全景。この窓からは外がよく見渡せる。
心柱「東大柱」「西大柱」の上端
心柱はここ5階の天井まで。その上端が見られる。1枚目が東大柱で2枚目が西大柱。
(文・写真:岡 泰行)