城の撮影後の写真整理は?
筆者も若いときは、石垣のドアップでもどこの城が覚えていられたが、今やすっかり忘却の彼方。近世の城の城内の写真なら、アングルの中にヒントとなる背景や遺構が写っているので、忘れた頃に後から何を移した写真か判別しやすいが、近世の城でも城下の写真や移築城門となると、どこのものか分からなくなるケースがある。
まして整備されていない中世の山城となると、曲輪や石垣(石積)は、城のどこを撮影したものか、ほぼ解らない(笑)。ある程度、整備された山城となると、曲輪名が記載された標柱と一緒に撮り、時系列で写真データを管理しておくと、記憶を辿ることができるが(人は時系列に記憶がリンクしているので、どこかで場所がわかる1枚があれば、周辺の写真を比較的思い出しやすい)、山城で各曲輪を行ったり来たりと縦横無尽に移動してしまえば、どこの写真か判別しにくくなる。
お城めぐりをしていると、色々な城の写真をどういう形で保存しておくかも重要だ。昔は木々が成長していなかったので撮れたアングルや、柵がなく遺構が見えていた時代とか、スロープが設けれる前の当時の階段とか、古いからといって捨てられない記録写真が多い。後から検索しやすいように、時間のかからないレベルで写真の整理が必要となる。
筆者は、どの城に何回、どの季節に訪れたのかがひと目で分かると嬉しいので、地域ごとにフォルダを作り、その中に「城名_日付」または、「城名_日付_特筆すべき内容」といった名称でフォルダを作成し、撮影データを丸ごと(外部の)ハードディスクに保存するシンプルな方法だ(それをさらにバックアップしている)。同時に現地で得たパンフレットなど紙の資料も撮影して内包しておく。昔はその容量からDATに保存したりとしていたが、ハードディスクも安価になり、また、ひとつのフォルダに内包できるファイル数も飛躍的に伸びた。数千城をめぐる大阪府のNさんや、滋賀県のBさんにお話を伺うと、ほぼ同じ整理方法だった。
できるだけ時間をかけない
理想は、山城のどこの曲輪の写真かなど、元データ1枚ごとに整理して記録しておいておきたいが、これは骨が折れる。日本人は「整理整頓」が大切と教えられてきたが、そもそも整理整頓とは、後の検索時間を短縮するためのもの。時間は有限で、また、整理時に想定したかたちで後から検索もしないケースもあるので、そのために整理に時間を使ってしまうのは、もったいないかもしれない。
それを簡単に解決する方法は、GPS搭載のデジタルカメラをお城めぐりに使うこと。整理に割く時間が大幅に短縮できて良い。2006年代は、GPSレシーバを持ち歩き、後に写真データと融合する作業と時間が必要だったが、昨今、GPSはスマートフォンやコンデジに、ほぼ搭載される時代になったし、そのログもアプリで取れたりと至れり尽くせりだが、デジタル一眼は、機種によっては最近まで、標準搭載ではなくGPSのアクセサリーを別途購入していた。上位機種にも、ここ2、3年で標準搭載される時代になった(もちろん電池の消耗が早いので、予備の電池をと荷物は増えるのだが)。
GPS搭載のカメラで撮ると、画像データが持つExif情報にGPS情報が附加される。メーカー付属のソフト、または、例えば、Adobe Lightroom などで、Googleマップ上で撮影スポットを表示することができる。先日、大阪府のSさんのご案内で、三好長慶の飯盛山城を訪れたが、木々が生い茂っているためGPSは半ば諦めていた。ところが結構なレベルで感知していた。縄張図と照らし合わせると、どこの石垣を撮影したものか見事に解る。使い方は簡単でソフトで写真データを読み込むだけで、マップ表示すれば、撮影スポットが表示されるといった具合だ。
飯盛山城の撮影位置
Adobe Lightroom で飯盛山城の写真を読み込みマップ表示した様子。メーカー付属ソフトであれば、撮影方向も表示される。また、GPSの設定でログも記録すれば、歩いた軌跡も記録される。黄色いタグが、Sさんにご案内いただいた2018年に発見されたとされる石垣の場所(土留め説あり・ページ冒頭の写真)。
(文・写真=岡 泰行)