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三河湾周辺の石丁場をめぐる

名古屋城の築城を支えた石丁場。その痕跡を自らの足で探る旅は、まるで歴史のパズルを解くような興奮がある。篠島を皮切りに、名古屋のTさんBさんのご尽力を得て、蒲郡市や西尾市の海岸線に点在する石丁場跡をめぐる機会を得た。そこには、石工たちの汗の結晶ともいえる矢穴の跡が静かに残り、かつての賑わいを物語っていた。

探索メンバーは6人でそれぞれが持つ視点と知識、想像力を働かせ、足元に眠る歴史を探る。調査報告書に記載があるが現存しないと判断されるものもあれば、逆に報告されていない新たな発見に出会うこともある。今回の探索は、記録と比較して最も差異があるものとなった。

写真は、愛知県の前島にある石丁場の風景。干潮時にしか渡ることができない島で、この地に刻まれた歴史を、そっと拾い上げる。

Googleマップのスクリーンショットはいずれも名古屋城の石丁場だ。Adobe Lightroom Classic による蒲郡市・西尾市の海岸線撮影場所GPS情報のプロット(矢穴石の場所以外に風景撮影も含む)。

前島の石丁場
前島(愛知県)の石丁場風景。前島は周囲約1km。海岸は平坦面はごく僅かで岩場を干潮時に1周した。

前島と西丸山海岸の石丁場跡
前島と西丸山海岸。干潮時に陸続きになり島に渡ることができる。

寺部海岸の石丁場跡
寺部海岸の石丁場跡。宝暦期と思われる矢穴列1、矢穴列痕1のみ。現地はDタイプ矢穴痕がかなり多く、築城期の石は持ち去られた可能性が高い。

八貫山・鳥羽田尻海岸・崎山海岸の石丁場跡
八貫山・鳥羽田尻海岸・崎山海岸の石丁場跡。八貫山の石丁場は刻印や矢穴が明瞭な石が多い。

竹島の石丁場跡
竹島の石丁場跡。周囲の岩場に矢穴が散見された。

西浦海岸の石丁場跡
西浦海岸に残る石丁場跡。遊歩道があり最も見学しやすい。

篠島の撮影
篠島には、東南の岩礁に石丁場の痕跡が多数見られ、島内の集落に残石が散見された。篠島の石丁場はこちらで紹介している。

こうしたフィールドワークは、ただ歴史をなぞるのではなく、新たな発見を積み重ねる営みでもある。名古屋城を築いた石工たちの息遣いを感じながら、今後も名古屋城の石丁場を訪ねたい。なお、各石丁場の写真はいずれWeb化し公開したい。

(写真・文=岡 泰行)

参考資料:
高田祐吉1999『名古屋城石垣の刻紋』(続・名古屋城叢書2)
東海大学海洋学部2016『幡豆の海と人びと』

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