写真風景の継承
その昔、筆者が駆け出しの頃、大阪城でひとりカメラを持ってうろうろしていると、遠くから大きな声で、「そこちゃうで、こっちからや〜!」と、写真好きのお爺さん数人から、バリバリの大阪弁でよく声をかけていただいた。大阪弁とは不思議なもので「そこからではなく、こちらから撮ると綺麗に見えるよ」という意味あいなのだが、声がどこから来ているのか分からず石垣を見上げると、まるで知り合いに声をかけるかのように、石垣上から手を振って「こっちに来い」と半ば怖い顔で命令が飛んでくる、距離感もなんのそのといった具合だ。これが行く度にあった。
アングルを探すには、基本はつぶさに歩くのが一番良いのだが、それが不思議と伝わり声がかかった。昨今はWebで数多くのアングルを知ることができる時代となったが、昔はこうして、アングルが写真家同士の交流で継承された。
雁木上からのアングルなど、初めて訪れた巨大な大阪城では知る由もないが、ある時間帯にそこに写真家たちが自然と集まり撮影していたりと、先人たちが継承してきた写真風景が多い。
先日、海外の観光客で写真が好きそうなカップルに眺望できる場所を指さすと、長時間その場所に佇み天守を眺めていた。彼らの旅がちょっと楽しくなる瞬間だ。現地でその風景を体感できるこうした機会が増えれば良いと思った。自身で開拓した風景も含め、引き継いだバトンを少しでも発展させて引き継いでもらえたら嬉しい。
撮影スポットも豊富な大阪城。姫路城並みに角度を変えて表情を楽しめる城だ。これが意外と知られていないようで、大阪城10景と高層ビルから望む3景をまとめてみた。
(文・写真=岡 泰行)